2017年9月30日土曜日

認知科学会@金沢 所感

9月14/15日、認知科学会に参加してきました。
忘れないうちに、ポスター発表から講演を通して自分自身が感じたことをまとめる。

印象深いキーワード 
・プロジェクション 
・マルチモーダル 

印象深く残ったポスター発表
・行為の様相が行為文理解時のボタン押し反応に与える影響
・構文作成型の第二言語習得

印象深く残った講演 
・オントロジー
・論理学ヘテロジニアス証明
・浅田稔先生のロボット
・言語学 SVOジェスチャー実験




まずポスター発表をウロウロ見て回った。
ポスター発表は研究レベルのばらつきが激しい。
面白いと思ったのはp2-2「行為の様相が行為文理解時のボタン押し反応に与える影響」粟津俊二さん(http://www.jcss.gr.jp/meetings/jcss2017/proceedings/pdf/JCSS2017_P2-2.pdf)
の研究であった。身体的な行為を表す文を耳にすると脳の運動野が賦活するという内容は以前から研究されていた分野である。その先行研究の延長として、文の動詞の違いによって反応の速さに差が出るのか調査しているようだ。実験では、手に関わる行為の動詞を耳にしたときに、意味がわかればボタンを押す、という実験手法をとっている。手行為文の理解時に、手の動作がシュミレートされているならば文の意味する様相によってボタン反応時間が影響されるであろう、という仮説だ。


で、実際仮説が正しかった。

例えば、「撫でる」と「殴る」では、前者は行為の速度は遅くて小さく、後者は速くて大きい。実験結果では、動作が大きく、早い行為の方が、反応は遅くなったらしい。

面白いと思った。
脳が時間や記憶というデータをどう扱ってるのか、にも関係してくる話だ。

私は夢をよく見る。
朝方パッと目が覚めて、時刻を見て、再び眠りに入る。
そして様々なストーリーの夢を見る。映画だと1時間かかるストーリーと情報量だ。
再び目が覚め、時計を見ると、時針が1分ほどしか進んでいない。
そんなの不可能だ、夢の中で物語の展開がいくつもあったのに。
どう考えても1分で説明できる内容ではないのに。。


人の脳は、時間情報を圧縮されたまま理解できるということではないかな、と思ってる。
1時間がどのくらいの時間であるのかを理解するのに、1時間を体験する必要はないのだ。時間という始めと終わりのあるリニアな情報を、一つのZipファイルのようなパッケージとして取り扱っていて、これはすごいことだけど、ファイルを展開することなく中身を理解できる。短時間で長時間を取り扱える。

私は、
この粟津さんの研究を見て「動作が大きく、速い行為の方がボタン押しの反応が遅くなる」のは、まさにこの"時間情報の圧縮機能"があるからじゃないかなーなどと考えていた。

速い動作が動作のはじめと終わりを含めたパッケージ時間情報であるとして...

例えば
「殴る」は「腕全体を後ろに引いて、拳を前に動かす」という一連の行為のパッケージ情報。
「撫でる」は進行行為の情報だ。

(今ふと思ったのだが、動詞にも包含関係がある。
{引く,反る,力を入れる,当てる}∈殴る 「殴る」動作を形態素に分けることができる。
)

一言に動詞、と言っても、どのくらいの情報量を圧縮してる語彙であるのかによって違う。そして脳は、その語彙の情報圧縮度合いによって、取り扱い方を変えているのではないかと思う。

そんな感じで、
現在の身体活動に近い動詞に対する理解反応は早くなり、身体的に再現しにくい動詞(概念的でパッケージ情報として扱っている動詞など)には、現在の身体活動から遠いという意味で反応が遅くなったということと、動作(時間)情報の圧縮度により反応速度が変わるのかもしれない、と思った。







言語認識の不思議に囚われたCucuWawaの日記です。 copyright 2015 @miyagi