2017年8月15日火曜日

[読了Note]はじめての認知科学 (認知科学のススメ)

【Title】はじめての認知科学 (認知科学のススメ) 単行本
【Author】内村 直之 (著), 植田 一博 (著), 今井 むつみ (著), 川合 伸幸 (著), 嶋田 総太郎 (著), 橋田 浩一 (著), & 1 その他
 【Publisher/year】出版社: 新曜社 (2016/3/7)
【KeyWords】認知の癖 言語認識 幼児の認知発達 推論 人工知能  情報科学
【Summary】認知科学についての入門書。認知の癖について。モンティホール問題を始めとした、直感と現実のギャップ、推論方法の癖を指摘。情報科学が発達した1940年代から、認知科学は人工知能科学と共に生まれた。ミクロな視点では脳神経科学から社会活動といったマクロな視野を取り入れた、様々なスケールを用いた分野横断型研究が認知科学である。複雑な要素の絡み合った現実をいかに研究対象としてアプローチすべきか、認知科学的な考え方とは何かを優しくまとめた入門書である。認知科学の「ニン」の字も知らない忍者な私でもすんなり読めた。


【Detail】
●第一章では、心の学問「心理学」と情報科学の発祥について触れる。
 19世紀後半から実験心理学が始まった。自然科学者が現象を定量化する中、心理学者たちは心の仕組みを”客観的に”説明するために奮闘した。そこで条件反射という客観的指標を取り入れた。その後1913頃にはアメリカで行動主義という心理学の方法が提唱されるようになった。"刺激ー反応"その対を繋ぐものが学習とする。トルーマンの実験は、ネズミには、刺激の質が違えど地図(位置情報)を把握する能力が備わっていることを示唆している。

心の中に存在していて、心が扱える対象を総称して「表象」と呼ぶ。representation.
20世紀後半にはコンピュータの発明により情報科学の基本的な考え方が生まれた。
<認知科学と人工知能が生まれた背景:The background of twins : cognitive science and AI field>
1936. アラン・チューリング チューリングマシンを構想
1945. フォン・ノイマン  CPにプログラム概念を格納するというアイデアを提唱1948. 生物と機械の構造制御分析したサイバネティックス出版
同年  ヒクソン・シンポジウム「神経系の働き」討論
1950.    チューリングがチューリングテストを提唱
1956. ダートマス大学で人工知能と認知科学という2つの研究分野が生まれた


●第二章では、人の脳と情報処理を重ねて、記号や表象、言葉の処理の仕方を論じている。 認知科学がミクロからマクロまで扱う学際的な分野であること。例えば神経細胞から脳を考える場合、一つの神経細胞には思考もなければ意識もなく「発火」という興奮状態があるのみで意味はない。多くの神経細胞がお互いに結合しあってネットワークを繋げ大きくなると、様々な機能を持つようになり「意味」の萌芽が出てくるようになるのだ。
心や脳について解明しようとするときには、このようにいくつものレベルで考える必要がある。
言葉の獲得について。子供が言葉を学習するときには推論能力を使っているであろう。
原因→結果の連合学習・統計学習を行い、強制して行くことで言語・行動パターンを覚える。
ここで「記号接地問題」というものが出てくる。ある記号とその記号を取り巻く記号がどういう関係にあるかを知っていること、ある記号とその周りの接地されている記号を理解することが、本当にその記号の意味を知っているのだ、という立場だ。例えば、形式的な記号「パパ」などの音システムがどのように現実の意味と結びついて行くのか明らかにしようとしている立場が記号接地問題だ。
最近では、脳内にはカテゴリ分けた言語「辞書」があるとみられるようになっている。 「こころの辞書」メンタルレキシコンは、言葉の意味はもちろん、使用時の特徴、発音の音、そこから連想されるイメージ、関係する概念がネットワークの結びつきについてを研究対象とする。

●第3章は、こころと身体と言語についての関係をまとめている。嬉しいから笑うのではなく、笑うから嬉しくなるといった、唯身体論から、他人のジェスチャーを見るだけで、自分の脳内でも同じ動きをしたような賦活が起きるミラーニューロンなど、他者に共鳴する能力についてを考える。
アフォーダンスについても述べている。モノの形や色によって、ある行動が喚起される、というのがアフォーダンス(affordance)だ。例えば、取ってのないコップがあれば、人はそれを握るし、取ってがあれば指で引っ掛けて持つようになる。モノの形が、ある特定の運動を引き起こしていると説明する。An affordance is the possibility of an action on an object or environment.
ことばが世界に与える影響について。ことばは世界を分節化して理解するツールである。身体性だけで処理できる世界と、言語を獲得した後の世界はどのように違うのか。身体性による処理は、「今・ここ」という場に限られるのに対し、言語能力は、「今・ここ」を超えた現象を説明し伝達し、共有して行くことを可能にする。


●第4章は、チンパンジーと人の認知方法の違いについてだ。 チンパンジーは、情報を圧縮し(冗長な文字列を自主的に一つの記号として)記憶するといったことができないことがわかった。例えば、abbabbaabbという文字列がある場合、abb=A と記号つければ、AAaAと簡単に覚えることができる。が、チンパンジーはこれができない。

対称性について。Aの後にBという事象が成り立つとA→Bという因果関係を構造化しA→Bが成り立てばB→Aも成り立つと考える(認知バイアス)を対称性推論と呼び、人間特有のものである。チンパンジーに限っては前者のみ理解できるが逆向きの流れは理解ができない。
ただし、推移的推論(三段論法)は、チンパンジーでも可能であることがわかっている。


●第5章では、これからの認知科学のテーマについて述べている。 人間が概念化できて人工知能にできないもの「美的感覚」などについて述べている。
ゼミの先生が言っていたように、人工知能にとっての「意味や美しさ」は我々がもつ「意味や美しさ」とは異なるものである可能性があるので、人の思考バイアスとコンピュータ的思考を別ものとして想像した方が面白そうである。

 

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言語認識の不思議に囚われたCucuWawaの日記です。 copyright 2015 @miyagi